利下げや利上げについて話すと、多くの人は無意識に「利下げは好材料、利上げは悪材料」と一言で片付けてしまいます。聞こえは良いですが、正直その論理はあまりにも粗雑です。

まず、核心的な誤解はどこにあるのかを説明します。利上げや利下げ自体は価格のボタンではなく、むしろシグナルに近いものです——市場に対して「今の資金はより高くなったのか、それとも借りやすくなったのか」を伝えるものです。株や債券などの伝統的な資産にとっては、これは主にコストの問題ですが、暗号通貨の世界では、より重要なのはリスク許容度がいつ変わるかです。「利下げがあるかどうか」だけを見ると、実際の相場を決定づける本当のタイミングを見逃しやすくなります。

私自身もこの落とし穴にハマったことがあります。かつては、利下げが始まれば暗号通貨は上昇すると考えていましたが、何周期も振り返ると、その考えは間違いだと気づきました。多くの場合、相場は「最初の利下げの日」に始まるわけではありません。むしろ、利下げがすでに行われている時期に、市場はまだもたついていたり、逆に調整局面に入ったりすることもあります。このとき、「問題は金利そのものではなく、期待の変化にある」と気づくのです。

ここには重要な分岐点があります。一つは、「利下げ＝資金増加＝リスク資産の上昇」と理解する見方。もう一つは、「市場の反応は実は『引き締まりから緩和への変化過程』そのものであり、その状態自体ではない」と考える見方です。私は後者の方により共感します。

なぜなら、市場はしばしば先に期待を織り込むからです。みんながFRBの利下げを待ち望み、先回りしてポジションを取ると、実際にその瞬間が訪れても、意外と動きが鈍いことがあります。これこそが最も見落とされやすいポイントなのです。