ブロックチェーン12年：どのような分野に応用されているのか？

人々は何度もブロックチェーンの適用シナリオや使用タイミングについて語ってきました。しかし、実際には、単純にブロックチェーンとすべてのビジネスを結びつける行為は非常に愚かで荒唐です。

単に「ブロックチェーン」という言葉（背後にある技術ではなく）を使って宣伝するだけでは、結局は空虚な結果に終わるでしょう。しかし、適切に活用すれば、ブロックチェーンは確かに特定の経済分野の発展を促進することができます。

この目標を達成するには、一歩一歩ゆっくり進める必要があります。ガートナーの専門家は、ブロックチェーンは現在「幻想からの脱却」段階の瀬戸際にあると考えています。この段階では、その技術的欠点が露呈し、各種メディアも批判的な態度を取っています。

では、実際にブロックチェーンを基盤とした良い製品は存在するのでしょうか？もしあれば、それはどの分野にあるのでしょうか？

金融サービス

ブロックチェーン12年：どの分野に応用されているのか？

まず、金融サービスは良い選択肢です。結局、多くの伝統的な仲介機関には透明性の低さや高い手数料の問題があります。現在、多くの大手銀行が分散型ソリューションの研究とテストを行っています。では、市場にどのような選択肢があるのでしょうか？

ネット・エクイティ・クリアリングは非常に良い例です。Hyperledger Fabricを基盤とし、二者または複数の取引当事者間の取引によって生じる複数のポジションや支払いコストを相殺できます。これは、多者間の合意において報酬を得るべき側を決定するためによく使われます。ネット・エクイティは一般的な概念として、金融市場（証券取引）においてより具体的な用途もあります。

さらに、ブロックチェーン債券、抵当ローン、銀行保証についての議論も絶えません。ほぼすべての大手銀行、イスラム銀行もこの手法を試みています。

Hyperledger FabricやCordaなどのブロックチェーン技術も他のユースケースに頻繁に応用されていますが、その展望については今後の継続的な追跡調査によって最終的な結論を出す必要があります。

米国銀行、ゴールドマン・サックス、シティバンク、モルガン・スタンレー、JPモルガン、中国銀行、オーストラリア連邦銀行は2019年に良好な成果を上げました。また、銀行業界では、越境金融取引についても言及されており、SWIFTからの脱却を目指す動きもあります。

著作権保護

一部の人々は、ブロックチェーン技術は著作権保護やデータ改ざん防止に大きな展望があると考えています。例えば、著作権保護を目的として、スタートアップ企業Sputnik DLTはWavesプラットフォーム上にDepositorサービスを開発しました。

同様に、EmernotarはEmercoinを基盤とした類似のソリューションで、SHA-512アルゴリズムを使用しています。開発者によると、企業や弁護士はEmernotarサービスを利用して契約を締結し、オンラインサービスを通じてユーザーの許諾を収集し、クリエイティブ産業の代表者もこれを使って著作権を確認できます。

Emercoin技術を基盤としたdemocracynotary.orgプラットフォームは、選挙に関する重要情報の保護を目的としています。選挙過程では、ブロックチェーンは投票の匿名性を保証できませんが、少なくとも投票の真実性は保証できます。

最近、このプラットフォームの効果はマケドニアの国民投票で検証されました。内容は、ギリシャとの条約を承認するかどうかについてで、マケドニアの国名を「北マケドニア」に変更することを求めるものでした。このプラットフォームは、国民投票の公開報告を公証し、虚偽情報の拡散を防ぎました。

不動産業

ブロックチェーン12年：どの分野に応用されているのか？

ブロックチェーンのユースケースは、不動産取引の登録において非常に有望です。昨年、イーサリアムのスマートコントラクトを利用して、司法管轄区域内での売買取引を行おうとした事例もありました。すべての地域の立法機関が弁護士の行為を理解できるわけではありませんが、過去にも今後も試みは続きます。

例えば、最も有名な例は、カリフォルニアの分散型Propyマーケットを通じて、10エーカーの土地の売買を完了したケースです。取引は完全にビットコインで行われ、ブロックチェーンに登録されました。その後、EUも最初のブロックチェーン不動産販売を完了しています。

2018年12月、スイス金融市場監督局は、ブロックチェーン企業「Blockimmo不動産会社」のビジネスモデルを承認しました。現在、Blockimmoプラットフォームはテスト段階にあり、スイスとリヒテンシュタインの住民が利用可能です。その後、同社はヨーロッパ全体への展開を計画しています。

卸売・物流業

ブロックチェーン12年：どの分野に応用されているのか？

一部の専門家は、ブロックチェーンの卸売・物流分野での応用展望を非常に高く評価しています。一方で、無用だと考える専門家もいます。しかし、消費者としては、すでに業界内で成功を収めている事例を肯定すべきです。

2018年秋、石油大手BPとShell、大手銀行や企業はVaktブロックチェーンプラットフォームを立ち上げ、商品取引の効率化を目指しました。紙の書類をスマートコントラクトに変換することも含まれます。

同時に、アラブ首長国連邦（UAE）もこの分野でブロックチェーン技術を活用しています。Maqta Gateway LLCはアブダビで最初のブロックチェーン物流ソリューションを導入しました。開発されたSilsalブロックチェーン技術は、物流と貨物の効率性向上に寄与します。Maqta Gatewayは、DLT技術を用いて書類作業を削減し、リアルタイムの状態更新と情報共有の迅速化を図っています。

昨秋には、IBMの食品トラストブロックチェーンプラットフォームも開始されました。Hyperledger Fabricを基盤とし、食品業界のサプライチェーンを調整します。カルフール（Carrefour）、ネスレ（Nestle）、Dole Food、タイソンフーズ（Tyson Foods）、クローガー（Kroger）、ユニリーバ（Unilever）、ウォルマート（Walmart）などの有名企業もこのプラットフォームのメンバーです。IBMのブロックチェーンサービスの月額料金は100ドルから10,000ドルまでさまざまであり、これがこれらの業界大手が投資を進める理由です。

交通・輸送業

ブロックチェーン12年：どの分野に応用されているのか？

2017年秋、分散型のShelf.Networkオークションプロトコルが開始されました。自動車販売店はこのプラットフォームを通じて車両の販売やリース取引を行えます。

1年後、このオークションネットワークは日本のIT大手Broadleafの投資を受けました。同時に、BroadleafはShelf.Networkの技術ライセンスも取得し、日本、ミャンマー、タイ、インドネシア、ベトナム、ラオス、オーストラリア、インド、シンガポールなどの東南アジア諸国において自動車と部品の販売貿易ネットワークを構築しています。

2018年末までに、米国からの自動車6万台がこのサービスネットワークに参加しました。Shelf.Networkはまた、Carfaxのウェブサービスと連携し、個人や企業に車両履歴レポートを提供しています。例えば、ドイツで自動車を購入したスタートアップのAuto1 Group GmbHは、ブロックチェーンを用いてローンや保険商品を記録し、取引のスピードを大幅に向上させました（従来の書類作業では2週間かかるところを、これを採用すれば短縮可能です）。

IBMのビジネス価値研究所の調査によると、2021年までにブロックチェーンは自動車業界で重要な役割を果たし、航空分野にも応用されると予測されています。例えば、S7航空とロシアのアルファ銀行は、Hyperledgerのブロックチェーンプラットフォーム上でスマートコントラクトを活用し、飛行機の燃料費をリアルタイムで支払っています。

業界内のさまざまな関係者は、DLT技術が相互決済の効率化と迅速化、各種財務リスクの排除、プロセスの自動化を実現できると信じています。卸売物流と同様に、この技術は輸送分野においても重要な応用意義を持ちます。

公共部門

ブロックチェーン技術は公共部門にも徐々に浸透しており、書類認証プロセスに広く利用されています。例えば、Proofstackサービスは、書類と所有者の個人署名、日時スタンプを一緒にアーカイブし、そのハッシュ値をブロックチェーンに記録します。ユーザーは、影響を与えるタイムスタンプの種類や、アーカイブに必要な保存場所（コンピュータ、クラウド）を選択できます。作成されたアーカイブを通じて、誰がいつどのように書類をアーカイブしたかを確認できます。同時に、司法システムにおけるブロックチェーンの応用も拡大しています。例えば、ServeManagerやIntegraは、召喚状の配達追跡サービスにブロックチェーン技術を導入しています。

中国では、政府支援のブロックチェーンソリューションが着実かつ迅速に発展しています。司法用ブロックチェーンシステム「天平链」は、リリースからわずか3か月で約100万件のオンライン証拠データを収集しました。プラットフォームに提出された資料はすべてDLT認証を受けており、合計19万件の書類があります。電子証拠システムは北京インターネット法院、中国工業制御システム緊急対応チーム（CICS-CERT）、工信部研究センター、百度インターネットグループ、TrustDoブロックチェーンスタートアップ企業が共同で開発しました。プラットフォームは、インターネット大手の百度の超リンクインフラを基盤とし、証拠収集と保存のプロセスを最適化し、データの真実性を保証します。さらに、インターネット関連の訴訟コスト削減も実現し、時間とリソースの節約に寄与しています。

保険・フィンテック

世界のコンテナ輸送のリーダーであるMaerskは、昨春、Insurwaveブロックチェーンソリューションの利用を開始しました。この海上保険プラットフォームは、コンサルティング会社のEYとGuardtimeが共同開発し、Microsoft Azureクラウド技術を基盤としています。Insurwaveと提携した最初の年に、Maerskは1000隻の洋船に保険をかけ、デジタル取引の総数は50万件を超える見込みです。

現在、プラットフォームのユーザーにはWillis Towers Watson、XL Catlin、MS Amlinなどがあります。開発者は、Insurwaveの機能拡張を試み、保険業務を航空やエネルギー分野にも展開しようとしています。

投資流管理に特化した英国のフィンテック企業Calastoneは、すべての計算をブロックチェーン上で完結させると発表しました。この技術は、世界の決済部門のコストを数十億ドル削減するのに役立つと見込まれています。Calastoneは、1700以上の企業にリスク評価管理サービス、ITインフラ、支払いソリューションを提供しており、その顧客にはJPモルガン・アセットマネジメント、シュローダーズ、インヴェスコなどがあります。

企業の目標が取引やDLT登録簿の情報の透明性を追求することであれば、ブロックチェーンは絶好の適用シナリオを生み出します。しかし、匿名性や金融取引の「追跡」を維持したい場合は、ブロックチェーンの出番はありません。

エネルギー・通信業界

ブロックチェーン12年：どの分野に応用されているのか？

シンガポール電力グループ（Singapore Power Group）は、再生可能エネルギー（REC）証明書のブロックチェーン取引市場を立ち上げました。同社代表は、この「内部開発」プラットフォームは、こうした証明書の取引の安全性、信頼性、追跡性を向上させることを目的としていると述べています。

REC証明書は、太陽光パネルが発電した電力量を証明する証明書で、Cleantech Solar AsiaとLYS Energy Solutionsが販売しています。証明書の購入に関心のあるCity Developments LimitedやDBS Bankもこのプラットフォームに関心を示しています。Katoen Natie Singaporeも参加し、再生可能電力の生産能力の早期立ち上げを計画しています。

韓国最大の通信会社KTも独自のブロックチェーンネットワークを展開しています。分散型登録技術は、ユーザー認証や国際ローミングサービスの改善に関わります。KTはこれにより、顧客データを安全にパートナーに伝送できます。ネットワーク帯域は毎秒10万件の取引を処理可能です。

これらの施策が一般市場に受け入れられるかどうかは時間が証明します。同様に、電力、データ、ユーザー識別のアカウント／記録／取引におけるブロックチェーンの応用も古くから語られてきたテーマです。

教育業界

2017年末、MITはBlockcertsウォレット（「検証可能で改ざん防止」な認証証書を発行できる）を用いて、ビットコインブロックチェーン上に100人以上の卒業生のデジタル卒業証書を発行しました。

この実験は、ソフトウェア企業Learning Machineの支援を受けており、同社はMedia LabとともにBlockcertsの開発に関わってきました。

この目的は、学生が自分の記録の真の所有者となることです。Learning MachineのCEO、クリス・ジャジェスは、将来的にその機関が存在しなくなった場合でも、重要な公式情報を取り出せると述べています。

トビリシビジネス・テクノロジー大学も同じ方法を採用しています。同大学はEmercoinと提携し、Trusted Diplomaという類似のブロックチェーンプラットフォームを使用しています。このプラットフォームは、学科、研修の質、取得した点数などの登録データをブロックチェーンで修復可能です。将来的には、ブロックチェーンはデジタル学習方法のさらなる普及に役立つ可能性があります。

現在、ブロックチェーンの各分野でのユースケースは多くありませんが、その将来性は私たちの想像をはるかに超えています